9月8日付け//ご挨拶(表4コマまんが更新)
なぜか急に小学校1年生の頃の事を思い出したので、なんとなく書いておこうと思う。

その日はひらがなの書き取りをやっていた。

課題は『さくらさくら』の歌詞であった。わからない人のために一応書いておく。

『さくら さくら
のやまもさとも
みわたすかぎり
かすみかくもか
あさひににおう
さくら さくら
はなざかり』

という歌詞であった。これを専用ノートに書き込むのである。

今にして思えば、なんという事のない作業だ。

しかし、まだ文字を覚え立て(いや、覚えてさえいないか)の小学校一年生である。

みみずののたくったような字しかかけなかった頃の事である。

とても面倒で大変な作業であった。腕が痛くなるほどにだ。

両手利きでない人であれば、利き腕じゃない方で書いてみれば理解しやすいだろう。

ほら、めんどくせえだろ?

ガキっていうのはなんでも張り合いたくなる生物だ。

こういうのも早く終わったら偉いみたいな風潮が知らぬうちにできあがる。

字が少々汚くともいいのだ。とにかく早い者が偉い。1位になれば英雄だ。

そして、桜丘君(仮名)がとても早く仕上げた。鼻高々である。

「おおー、はえ〜。」「すごいすごい」「ちぇっ」

というような声があがる中、先生がある事に気付いた。

『桜丘、これ間違えてるからやりなおし。』

え? 間違え? いったい何を間違えたのか? わらわらとガキどもが群がる。

桜丘君が書いた歌詞の最後の行は

『さくら さくら はなざくら』

になっていた。

はなざくら。

はなざくらになっていたのである。


「さくら」って何度も書いたので、「さ」のあとに反射的に「くら」って書いちゃったんだな。

しかも、この書き取りの作業はサインペンにて行われていたので、ケシゴムが使えない。

桜丘君はちょっと泣きそうになりながら最初から書き直した。

顔をくしゃくしゃにしながら、周りによってくるクラスメートに

『こっちくんな! こっちくんな!』

と叫びつつ。ノートを隠すように身体で覆いつつ。

みんなの倍の文字を書いたのだから、当然終わったのは最後だった。

校庭にははなざくらが咲き乱れる春の事であった。


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