8月20日付け//ご挨拶(表の4こままんが更新)
今日は仕事で写真の切り抜きをやった。素材はサッカーの試合中スナップだ。
屈強な男達がフィールドで玉を蹴り蹴り走っている、その選手達を切り抜く作業だ。
着々と作業を進めていく俺の前に1枚のスナップが表れた。
それは他のスナップと明らかに違っていた。
もも毛である。ふとももが大量の毛に被われているのだ。
『すごい! カコイイ!!』
としばし見愡れてしまった俺だったが、そこである事に気付く。
『…俺、この毛もちゃんと切り抜くのか?』
ちょっと専門的な話になるが、切り抜きといってもただ背景と分離させればいいわけではない。
クリッピングパスと言って、ペンツールで少しずつちょこまかと線を描いていかなければならない大変面倒な作業なのである。
俺はオフィスを出ると1階の喫茶店に行きエスプレッソを注文した。
素材はコーナーキックの瞬間で足はブレており、毛は無視して腿のラインで切り抜いても問題はあるまい。
しかし、ブレながらも毛がちゃんと視認できるのもまた事実だ。これを無視する事は俺のプロとしてのプライドが許さない。
俺は熟考した。そして3杯目のエスプレッソを飲み干した頃決意も固まった。
『切り抜こう、毛を。』
軽いステップでオフィスに戻ると、さっそく取りかかった。
気の遠くなるような時間を耐え抜いて完成させる。
俺は大変な手間をかけて切り抜いた写真を見つめ直した。
変だ。あきらかに変だ。
もともと写真がブレてる事もあって、カッチリした境界線がなんともおかしい。
まるでふとももに大量のヒザラガイが寄生しているかのように見える。
俺はたっぷり3分ほど無言で写真を見つめた後、おもむろにパスを削除し、腿の美しいラインで切り直した。
エアコンから吐き出される空気は生ぬるく、少しカビのようなにおいがした。


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